ペイ・フォー・パフォーマンス(業績・成果連動型給与体系)

1ターゲットボーナス

基本年俸と業績に連動するインセンティブボーナスの組み合わせで、個人の貢献を報酬に反映しようとするものである。

基本年俸は中期的な実績により決定されるものとしある程度の安定を維持しつつ、インセンティブボーナスにより、短期的にラッキーパンチだろうが、本当の実力だろうが貢献度に報いることでやる気と納得性を高めようとするものである。

ラッキーパンチでも再現性が認められれば、実力として、インセンティブボーナスの一部を基本年俸に組み入れる方式で中期的な貢献度も反映していくところに特徴がある。

従前の職務給なり、職能給では資格が上がらなければ短期的な貢献に報いるには限界があったものが、これによりかなり幅が広がったと言える。また、昇格させなくても貢献度に報いる方法があるために、昇格のインフレを防止でき、昇格がなくても、ターゲットボーナスというにんじんがあるためにモチベーションを維持できる。

2.個人契約型年俸制

過去の貢献度を引きずりながら年俸を契約するのではなく、計画を立てて、それが実現したら契約どおりのインセンティブ賞与を払うというものである。

報酬体系は基本年俸とインセンティブ賞与からなり、基本年俸は各職位なり、職階なりによってシンプルに決める。インセンティブ賞与は個人別に目標計画によって金額を大きく変動させ、その成果によって満額払うのか、半分なのか”0”なのかを決める。あくまでインセンティブ賞与は単年の運用として精算してしまうのに特徴がある。

例えば課長600万、次長700万、部長800万と基本年俸が決まっていたとして、インセンティブ賞与をその他に個人ごとに300万であるとか600万という具合に目標計画を評価して決める。決算終了時に目標計画に対する成果を評価してインセンティブ賞与を決定する。

このようにすることにより、同じ課長でも年俸に大きな差が出ることになり、目標計画を価値のあるものを作って実現さえ出来ればいつでも多くのインセンティブ賞与が得られることでモチベーションを高めようとするものである。

3.マーケットバリュー型年俸

給与の管理には昇給ということも重要であるが、マーケットバリュー(市場価格)を基にした絶対額管理も重要である。

絶対額管理は、市場価格と実績(成果)によって報酬額を管理する方法である。

市場ではその人の仕事のスキルや、実績などを総合的に判断して相場はいくらぐらいなのか?

相場よりも高いところも、低いところも、同じくらいのところもあるはずである。

まず、社内の人材から指標となるべき人材を各階層ごとに数名選び、人材像を明確にする(仕事内容・スキルなど)必要がある。次に、その人材像群の世間相場を探ることになる。統計値を利用したり、有料人材紹介会社に相談したりしながら相場を調査する。その上で、会社の考え方で、相場額の7割から8割のところで、基本年俸を揃え、標準どおりの成果を果たした場合賞与変動部分で、相場額の報酬になり、成果が悪ければ相場を下回り、よければ上回るというように設計する。

尚、この方法は必ずしも市場価格に標準を合わせなければ行けないと言うのではなく、水準を理解した上で、それと連動させながら成果に見合った報酬を支払うということである。

4.ブロードバンド型報酬

組織のフラット化がしやすいように、出来るだけ職務給、仕事給、職能給などの等級をいくつかのバンドにまとめて階層を少なくし、その中で報酬を管理していこうと言うものである。

例えば、一般職・マネージャー職・経営職などを9等級で運用していたとしたらそれをそれぞれ3等級づつまとめて3つのバンドで運用するというもの。

どのような仕事をするのか、その成果はどうなのかによって、それぞれのバンドのなかで昇給管理をすることになる。

細分化し過ぎると、職務の内容を変えたり、異動を行なう場合には昇格を伴わせて処遇しなければならなかったものが、少ないバンドの中では、異動がスムーズにできる。たとえば、人事部長と営業本部長は従前の報酬体系では等級が違っていたとする。

従前のシステムでは異動時に営業本部長になり得る資格を有している者の中から異動させなければならなかった訳であるが、少ないバンドで運用していると、同じバンドの中の上の方に位置しているか下の方に位置しているかの差だけなので、ダイナミックな抜擢人事でも昇格を伴わせずに異動が出来、その後の成果を見ながら昇格管理を行なうことが出来るのである。

5.成果配分

個人の成果を報酬に反映させる方法だけではなく全社的な業績を配分するということも重要である。

  1. スキャンロンプラン
    売上高を増やし、人件費効率を上げると人件費率は低下する。そこで、低下した人件費率の売上高相当分を賞与・一時金で支払い、従業員に対する賃金分配を回復させようとするものである。

    • 追加分配賞与原資={(当期売上高×標準人件費率)-当期支払人件費}×0,75
    • ここでの成果は、標準人件費率の低下分と、売上高増加分の合計を意味する。成果の75%を配分原資として、25%を企業に分配する。
    • 標準人件費率は同業同規模他社平均等を利用しながら決定する。
    • スキャンロンプランは、付加価値率が変動しにくく、企業収益の変動が売上高に依存する流通業界で、多く採用されている。
    • この考え方には、目標売上高を決めて、それを上回る売上げに一定率を乗じたものを分配原資にしようと言うものも含まれる。
  2. ラッカープラン
    労働分配率の安定を目標として、付加価値高を基準とする賃金決定の考え方の延長線上にある。

    • 追加配分原資={(当期付加価値高×標準労働分配率)-当期既払い人件費}× 0,75
    • 当期付加価値高=売上高―(原材料+動力費+外注費)
    • 標準労働分配率=人件費/付加価値高(同業同規模他社平均等を利用しながら決定)
    • 0,75 は25%を企業に分配すると言う意味
    • 標準労働分配率があらかじめ決められていることから、付加価値を増やせば増やすほど、あるいは、人員や残業手当などを増やさずに人件費を節約すればするほど、賞与・一時金配分原資は増加する。
    • このプランは外部購入費の変動によって収益が大きく変化する製造業などで利用されるケースが多い。但し、現実の運用では、付加価値の増加が従業員努力によるものなのか、経営努力によるものなのかを明確にした上で、従業員努力分はストレートに還元すべきものであろうが経営努力によるものはそうは行かないので、その当たりを考慮した計算式を構築する必要がある。
  3. カイザープラン 
    売上高、付加価値高の実現された成果にリンクするのではなく、原材料費と人件費のコスト節約にリンクして賞与を決定しようと言うもの。

    • 第 1式
      追加配分額 (月当たり)={売上高×(A+B)-(実際の原材料費+実際の人件費)}×(1-1/3)×B
    • 第2式
      追加配分額 (月当たり)=[{売上高×(A+B)-(実際の原材料費+実際の人件費)}―投下資本額×1/60]×B
    • A:標準原材料比率=原材料費/売上高
    • B:上旬人件費率=人件費/売上高
    • 第 1式では、原材料・労働コスト節約の2/3または第2式では、同コスト節約の中から資本投下額の1/60を企業に配分する形になっている。
    • 両式を計算して従業員に有利な方を選択する。
    • 急激な技術革新期には従業員がコストダウンに意欲をもって当たれるような態勢を確立することが必要でありその点からは優れている。
  4. レーマンプラン 
    急激な技術革新期には省力化が進み付加価値労働生産性は急速に増加する。その結果成果配分額を急増させラッカープランがパンクしてしまう。そこで、レーマンはラッカープランの従業員の追加配分額を毎期純化された労働生産性指数で修正することを主張した。
    毎期純化された労働生産性指数とは付加価値労働生産性指数を資本集約度(使用総資本額/従業員数)指数で除したものである。

    • 追加配分額=[{(今期付加価値高×標準労働分配率)-既払い人件費}×付加価値労働生産性指数/資本集約度指数]×0.75
    • このような式にすることで、生産性向上分が従業員の努力によるものなのか資本投下によるものかがわかり公正な基準となる。